不遜な蜜月

―――あの夜から一ヶ月が過ぎ、とうとう生理は来なかった。


予約した松前産婦人科の待合室、真緒は不安で心臓がドキドキしていた。

ただ遅れているだけ。

そう信じているが、嫌な考えが脳裏をよぎる。


「香坂さん、どうぞ」

「は、はい」


気持ちを落ち着ける余裕もなく、真緒は診察室へと足を踏み入れた。


「真緒ちゃん、結果で出たわよ」

「・・・・・・はい」


白衣を着た松前先生は、優しい笑顔を浮かべている。

先生の人柄に惹かれて、この産婦人科を選ぶ患者さんは多い。


「おめでとう」

「・・・・・・と言うと、その・・・・・・」

「えぇ。6週目よ」


最悪の結果に、真緒は呆然とする。

優しい優しい松前先生から聞かされたのは、あまりにも衝撃的すぎる言葉だった。










病院からそのまま、自宅へと帰ってきた真緒。

力無くベッドに座り込み、重いため息をつく。


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