不遜な蜜月
「効き目は十分、ですよ」
悪戯っ子のように笑う楓は、とても可愛らしく見える。
理人の顔には、会社では決して浮かべることのない、心からの笑顔が浮かんでいた。
久しぶりの食事は、仕事で疲れていた自分を、思った以上に癒してくれる。
理人は祖母との食事を、最後まで楽しんだ。
―――ピピピッ。
―――ピピピッ。
鳴り響くのは、目覚まし時計。
ゴソゴソと布団から腕を出し、うるさい目覚まし時計を止める。
「会社、行かないと・・・・・・」
昨日は有給をとって産婦人科へ行った。
本音を言えば、このままベッドから出ないで、二度寝したい。
でも、そんなわけにはいかないのが、社会人の辛さだ。
「・・・・・・メール来てる」
携帯を開けて見れば、姉からメールが来ていた。
【産婦人科どうだった? 何時でもいいから、連絡ちょうだい】
送られてきたのは、真緒が寝た後だ。