不遜な蜜月
そういえば、産婦人科の結果を電話すると約束していた。
「妊娠してた・・・・・・」
メールを送ろうとして、真緒は手を止める。
自分でも受け入れられていない事実を、メールで伝えるなんて―――。
【会社終わりに電話する】
そんなメールを送ってから、真緒はベッドを下り、パジャマを脱いだ。
会社のエントランス、笑顔を浮かべる受付嬢。
朝も早いのに忙しく歩く男性社員。
今夜はデートなのか、気合いの入った服装の女子社員。
真緒はスッキリしない気分で、出社していた。
(どうしよう・・・・・・。産むってなったら、仕事は辞めなきゃだけど・・・・・・)
考えるのは、妊娠のことばかり。
無意識の内に、お腹を気にしてしまう。
「おはようございます、社長!」
女子社員の嬉しそうな声が聞こえて、真緒はビクリと肩を震わせる。
恐る恐る振り返れば、黒いスーツが今日も似合う社長―――黒崎 理人がいた。