不遜な蜜月
「今、何時だ・・・・・・?」
前髪を手でかき上げて、起き上がる。
鳴り響く携帯の在りかは―――。
「・・・・・・工藤。あぁ、迎えを頼む」
『わかりました、社長』
電話の向こうから聞こえてくるのは、淡々とした男の声。
「それと、俺のマンションからスーツを」
10分でシャワーを浴びる。
そう言って電話を切ると、昨晩の名残を消すかのように、バスルームへと向かった。
会社へ向かう電車の中で、真緒はため息を吐かずにはいられない。
(何であんなことになったんだっけ?)
ズキズキと痛む頭は、昨夜の記憶が曖昧だ。
昨夜は姉と飲む約束をしていた。
けれど、姉は用事ができて来れなくなってしまったので、真緒はひとり、ホテルのバーで飲んでいた。
お酒は強くないが、嫌いというわけでもないし、少し飲んだら帰ろう。
そう思っていた、のだが―――。