不遜な蜜月
「よろしいのですか? まだ、勤務時間中ですが」
仕事中に喫煙する理人を見るのは珍しい。
一臣は歩み寄り、灰皿を差し出す。
「吸いたい気分なんだ。本当は、朝から酒でも飲みたいとこだがな」
「上手くいかなかったようですね、その様子からすると」
差し出された灰皿に、灰を落とす。
「あぁ、断られた」
「何を言ったんですか?」
「・・・・・・間違ったことを言ったつもりはない」
煙草を灰皿に押し付け、理人はため息をつく。
「正しいことを言ったつもりもないが」
真緒が結婚を頑なに拒む理由が、わからない。
経済的にも世間的にも、子供の将来を考えても、理人との結婚は十分価値がある・・・・・・と思う。
「好きじゃない相手とは結婚しないとか、そんなか?」
「愛してる、と言ってみたらどうですか?」
一臣の提案に、理人は眉間に深いシワを刻んだ。
「俺がそんなこと言う男に見えるか?」