不遜な蜜月

玲奈のようなタイプの女性を、一臣はあまり好まない。

仕事においては良き同僚だが、プライベートでは極力避けたい相手だ。


「あなたの質問に答えたいのは山々なのですが、社長をお待たせするわけにはいかないので」

「あ、呼び止めてしまって、ごめんなさい」


玲奈は笑顔で一臣を見送る。


「やっぱり教えなかったわね」


わかっていたことだが、悔しい部分がある。


(気にすることじゃないって言われても、気になるに決まってるじゃない)


女性に興味を示さない理人が、彼女には心を向けている。

以前、社長室から出ていく真緒を、理人は追いかけていたし―――。


(もしかして、恋人? そんなはず、ないわよね・・・・・・?)


一度気になり出すと、簡単には忘れられない。

玲奈はモヤモヤとした気持ちを残したまま、自分のデスクへと戻った。





「お呼びでしょうか?」


一臣が社長室に踏み入ると、煙草の香りが鼻孔を刺激した。

理人が煙草を加えて、煙りを吐き出している。


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