家元の寵愛≪壱≫


隼斗さんには敵わない。

ちょっとした言い合いも淋しいと思った事さえ

彼のほんの一瞬の行動で帳消しになる。


あっという間に満たされる心に塗り替えられ

そんな彼に貪欲にも……

『もっと…』と願ってしまう私がいる。



「ほら、遅くなるぞ?」

「………はい」


私は隼斗さんに頬を撫でられ、

ニコッと明るい笑みを浮かべて、自宅を後にした。



私は外国語学部の教授の手伝いで

海外からのお客様の案内をする係。


外国語学部は語学だけでなく、

政治、経済、文化等グローバルな分野を学び、

専門知識を身につける事を目的としている。


だから、海外の教育関連のお客様も多く、

私は和服姿で案内する事を依頼された。


必修科目の時事英語の教授なだけに

無碍に断る事も出来ず……。


半日の辛抱よ!!

今日の午前中だけという約束。

同じ学部の生徒十数人で分担して…。

よし!! 頑張ろう!!


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