家元の寵愛≪壱≫
「隼斗さん、『出掛ける』ってどこに?」
「ん?ちょっと、仕事に使う物を『とり』に?」
「えっ?お仕事の物を?じゃあ、ちゃんとした服に…」
ゆのは慌てて着替えに行こうと、
踵を返して俺に背を向けた。
「ゆの!!」
「んッ?!」
俺はそんな彼女の腕を掴んで…
「そのままでいい。別に人に会うワケじゃないから」
「へ?……そうなんですか?」
「あぁ、だからマフラーだけ、取っておいで?」
「……はい」
俺は優しく微笑むと、小さく頷いた彼女。
まぁ、腑に落ちないといった感じだが。
俺としては別に秘密にしなくても構わないが、
やっぱりゆのの感動した顔が見たくて…つい。
ゆのは白いカシミアのマフラーを取って来た。
「車の中はしなくても大丈夫ですよね?」
「ん」
ゆのは黒いセーターにスカラップ使いのコートを羽織り、
膝丈上のふんわりとしたキュロットに
ロングブーツを履いて……。
ヤバい……。
可愛さが倍増してる////