家元の寵愛≪壱≫


私に課せられた物は汁物。

出汁を取るところから器選びまで。


お義母様と料理担当の牧さんの手を借りて、

最近、少しずつ上達して来た感じ。


だから毎朝6時前に母屋へ向かう。

朝稽古を終えた隼斗さんと入れ替わるように。



「おはようございます」


エプロン姿で挨拶をすると、


「おはよう、ゆのちゃん」

「おはようございます。若奥様」


お義母様と牧さんから挨拶が帰って来る。


テーブルの上には絹ごし豆腐と蛤、

大根と人参、木の芽が準備されている。


「今日は蛤のお吸い物ね?」

「はい」



お義母様に教わりながらお吸い物が完成。


牧さんが用意してくれた料理と共に

このお吸い物が配膳される。



「ゆのちゃん、隼斗を起こして来て?」

「はい」


私は離れへと向かった。


< 4 / 450 >

この作品をシェア

pagetop