家元の寵愛≪壱≫


「そして、このドレスは菫(すみれ=隼斗の母親)さんからのプレゼントよ」

「えっ?」

「この生地、見覚えない?」

「…………あっ!!」


ドレスに施されている生地に視線を落として気付く。

これは数カ月前にお義母様と呉服屋さんで手にした反物。

淡い桜色を基調とした西陣織の反物で

『春先にピッタリね』なんておっしゃってたっけ。


って事は、このドレスはあの時から?


驚愕の私はさゆりさんをじっと見据えると、


「ゆのちゃんは皆に愛されてるのね。絶対、倖せにならないと……」


柔らかな笑みを浮かべるさゆりさんに手を取られ、


「隼斗くんの元へ参りましょうか」

「…………はい」



もう、私の知らないうちに色んな事が起きていたんだ。

隼斗さんだけじゃない。

正木さんも店長も近藤さんも。

そして、桐島さんやお義母様、香心流のお弟子さんまで。



本当に全く気付かなかった私。

こんなにも嬉し過ぎる皆の気持ちに

私はどうやってお礼をしたらいいの?


さゆりさんにエスコートされ、披露宴会場の扉の前に。

そこには…………。



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