家元の寵愛≪壱≫
「ゆの、こっち」
「えっ?」
お義父様がお弟子さん達に指示を出している中、
私達は隣接する紫錦庵の方へと。
人気の無い茶室の手前で。
「ゆの、ごめん。少しの間、充電させて」
急に抱きしめられると、
どうしていいのか分からない。
だけど、
着物越しに伝わる彼の鼓動の速さ。
それはいつもより数倍早い胸の鼓動。
……もしかして、緊張してる?
「隼斗さん?」
「………」
黙ったまま……静かな時が流れる。
小鳥の囀りと揺れる木々の音。
微かに届くお弟子さん達の声。
ゆっくり流れる時を感じて…。
深呼吸と同時に緩められた彼の腕。
そっと隼斗さんを見上げると…
―――――――チュッ。
甘く唇が塞がれた。
軽く啄められた口づけは
……甘い余韻を残して。
「ゆの、行こうか?」
「///////////」
小さく頷く私の手を取り、
華やかな舞台へと歩み出した。