運命の果ての恋〜歴史は変わらない〜
変わる心と考え。
廃棄ガスのない空気。


それだけで、美夜にとっては心地好い朝だった。


以前までの美夜は、朝が心地好いなんて感じた事がなかった。


ふと気がつくと右隣には龍馬が寝ていて左隣には、重太郎が寝ていた。


龍馬はいつもみたいにへらへらしてなくて、


重太郎もいつもみたいにぶすっとしていない。


美夜は、例えを考えた。




天使…??


美夜は大袈裟な気がしたけど、まぁそれもあると一人納得していた。


美夜は幸せそうに眠る二人を見て口元が綻ぶ。


「フフフ」


いつからだろうか。


美夜が心の底から、笑顔になったのは。


声を出して笑ったのは。


美夜を変えたのは、龍馬達だった。


思わず笑っている事に気づかない美夜だが。


静かに冴え渡る空気はいくら小さい笑いでも、重太郎の耳に届いた。


重太郎は微かに目を開いたあと、眉間にシワをすっごい寄せながら起き上がる。


「おはよ」


そう、一言かけると、


寝起きのせいなのか、先程のかわいい寝顔からは全く想像出来ないいつも以上な仏頂面になる。


「あぁ…おはようございます」


「何ソレ」


「文句あるかえ??」


急に敬語で挨拶してくる重太郎に、思わず言葉が漏れる。


重太郎は、もっと不機嫌な顔をしてこちらをじとりと睨んだ。


そんな重太郎のギャップに、また美夜は笑えてきた。


「武智…おまん、変わったきのぅ」


突然、重太郎が美夜に言った。


美夜は笑うのをやめて、重太郎に何が??と首を傾げた。


「いや…おまん、笑顔ば増えたき…」


何が照れ臭いのか。


重太郎は極力美夜に視線をあわさないようにする。


美夜は、重太郎に言われて、初めて自分が笑っていた事に気がつき思わず口に手を宛がう。


それくらい、美夜は自然に。


笑っていた。


笑えていた。


当たり前な事が、美夜には当たり前じゃなかった。


笑顔が消えた美夜に、


笑顔がもう一度。


美夜は今まで両親には作り笑顔ばかりしていた。


だから、笑顔は難しいものだと思っていた。


美夜の世界からは笑顔が消えたし、笑わないのが普通になった。


心からの笑顔が。


まだ自分の中に存在していた事に、美夜は驚いていた。
< 25 / 137 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop