ヴァルキュリア イン キッチンⅡeternal
「ショック……か」



「……羽村さん?」



 羽村は自分でそう言って、自嘲気味に鼻で笑った。



『神崎紗矢子はもう逃げられないところまで来ている……彼女の末路がどんなものでも、春日さんなら……』


 羽村は何があっても私情を挟むことなく仕事を全うすることがある意味美学だと思っていた。

 けれど、奈央の気持ちを思えば思うほど、心境は複雑だった。



『やっぱり、彼女はいまでも神崎を親友だと信じて疑ってないだろうな……』



 羽村は個人的にここ数日で神崎紗矢子の今までの所業を、しらみ潰しに調査していた。


 紗矢子のやり口は詐欺まがいの契約や取引などで、殺人までは至らないものの、明るみになればおそらく警察は免れないだろう。


 F.S.Iの任務は犯罪に繋がる事を未然に調査し、それを警察に受け渡すこと、犯罪そのものを摘発することではない。


 羽村はそれを理解していながら、歯がゆい思いに葛藤していた。
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