Dearest
「まま―!!!!」



達也は母に抱きついた。




「今日は本当に助かりました。ありがとうございました」

「いえ、達也くんいい子だったんで全然手がかかりませんでしたよ」



アキと達也の母は頭を下げ合う。


アシュリーは何だかわからないが、寂しい気持ちになっていた。




「ほら、達也。お兄ちゃんに遊んでもらったんでしょ?ちゃんとありがとうって言いなさい」



母に促された達也はアシュリーに駆け寄ると、アシュリーの手を掴む。




「あちゅりも、いっしょにかえろ。ぼく、あちゅりと、ばいばいしたくない」

「そうは言われてもな。俺んちはここだし。…また遊びに来いよ」

「やだやだ!ばいばいしない!!」



達也は首を振りながら、アシュリーを引っ張る。




「達也。お兄ちゃん困ってるでしょ。ワガママ言わないの」

「やだーっ!!!!」

「本当にすみません。失礼します」



達也の母は達也をアシュリーから引き剥がすと、頭を下げ立ち去った。


達也の泣く声が暫く響いている。




「アシュリー、1日であんなに好かれたのね」

「…ガキはうるせぇ」



アシュリーはそれだけ言うと、家の中に入っていった。


ソファに座り、煙草をくわえるアシュリーは膝に残る重みの感触を感じた。




「…またな」



アシュリーの1日パパ体験は静かに幕を閉じた。


耳に残る声と共に…




「あちゅり!」
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