Fragile~思い出に変わるまで〜



仕事中、ポケットの中の携帯が震えた。


――誰からだろう?……健かな?


仕事中だから、携帯を確認することができなくて、それが歯痒い。


――もうすぐ昼休憩だから、それまで待つか……


気を取り直して、窓口で華麗にお札を数えながら、そう思う。


入金作業を終えると、通帳を機械に入れ、印字した。


「24番でお待ちのお客様ー」


品のいい高い声で軽やかにお客様を呼ぶのはいつものこと。


すっかりベテランの風格が身に付いてしまった。


銀行に勤め始めてから、もう10年が経つのだから当然といえば当然なんだけれど……


大学を卒業して銀行に就職した頃に私は結婚した。


だからすぐに辞めることが出来なくて、家事と両立することに決めたのだ。


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