Fragile~思い出に変わるまで〜
具合が悪い……にしちゃ俺を睨んでるっぽいのは気のせいか?


俺は一応、上司であり、そして一応、これから仕事に行くわけだから、これじゃまずいと判断する。


「桜井、何をむくれてんだかしらないけど、仕事にプライベートは持ち込むなよ?」


桜井は何か言いたそうに俺の目を見つめていたけれど、そのうち諦めたように頷いた。


「すみません……」


こんな桜井は初めてかもしれない。


いったい、何があったんだ?


「いや、わかればいいんだ」


結局、目的地に着くまで桜井はずっと口を開かなかった。


得意先では、仕事だと割り切ったのかきちんと勤めは果たしていた。


だけど得意先をひとたび出ると、相変わらず無言のまま。


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