Fragile~思い出に変わるまで〜
ちょっとおどけたように笑うさとみを、まじまじと見ていると、なにか違和感を覚えた。


――あれ?


その違和感を次の瞬間には口に出していた。


「さとみ……痩せた?」


ふっくらとしていた頬は見る影もなく痩けていて、もともと細身な体も小さくなったような気がする。


震える声でそう言うと、一瞬……悲しそうに目を伏せたあと、それを隠すようにさとみは笑った。


「いまごろ気づいたの?
もぉ、どんだけ妻のこと見てないのよぉ」


そう冗談ぽくほっぺを膨らますしぐさをして、怒ったふりをするさとみ。


――俺は……いったい何してたんだ!


さとみの変化に気付かなかった自分に腹が立った。


「悪い……、気づかなかったよ

体調……悪かった?」


そう気遣いながら尋ねると、さとみは大丈夫というように首を振る。


< 220 / 589 >

この作品をシェア

pagetop