Fragile~思い出に変わるまで〜



レストランでの話し合いのあと、車で藤森を送る帰り道。


無事終わってホッとした思いと、もう会う理由がなくなってしまったんだな……という思いで、なんとなく口数が少なくなる。


藤森も同じ思いなのか、いつもはうるさいくらいに喋るくせに、今日はいつになく大人しい。


運転しながら、ちらっと助手席を見ると、藤森は窓の外に顔を向け、何か考えているようにも見えた。


なんとなく沈黙に堪えられなくなって、藤森に明るく話しかけた。


「元旦那……中田さんだっけ?

納得してくれて良かったな」


そう話を振ってみると、彼女は窓の外を見ていた顔をこちらに向けて、恐縮したように答えた。


「ほんとにありがと
すごい助かった

健の演技も完璧だったし、あの人も信じ切ってたよ

これで安心して暮らせそう

感謝してます」


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