Fragile~思い出に変わるまで〜
感謝という言葉を聞いて、なんだか少しこそばゆい感じがした。


「思ったよりいい人そうだったから、話もスムーズにすんで良かったよ」


照れを隠すようにそう言うと、藤森は首を振りながら否定する。


「健が……いてくれたからだよ

私だけなら絶対無理だったと思う

あんなに一生懸命私とひなを守るって言い切ってくれてうれしかったな……

例え…演技でもさ……」


少し寂しそうに藤森が言うのを、俺は複雑な気持ちで聞いていた。


「まあ確かにあの人を納得させるための演技ではあったけどさ

二人が安心して暮らせるようにっていう思いは嘘じゃないから、少しでも役に立てて良かったよ」


藤森に期待させないような意味合いも含めながら、でも二人の役に立ちたかったという気持ちは本物であることを伝える。


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