Fragile~思い出に変わるまで〜
この子がいてくれて良かった。


本当にそう思う。


そうじゃなかったら、この時間を一人で過ごしながら、ただただ健を待つなんて堪えられなかっただろう。


ページをめくり、赤ちゃんの写真を見る。


まだ小さくて人の形にさえなっていない。


でもちゃんと心臓の鼓動がトクトクと動いていて、自分は生きているんだと私に伝えていた。


カチャ……


微かにドアを開ける音がしたような気がした。


私は慌てて母子手帳をしまう。


何事もなかったかのように、ソファーに座り直しミルクティーを飲んだ。


「ただいま……」


そう言いながら、疲れた様子で健がリビングに入ってくる。


「お帰り!」


カップを置きながら、目線だけを健に向け明るくそう答えた。


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