Fragile~思い出に変わるまで〜
でも……


俺にあんなに懐いてくれたひなを、放ってはおけない。


藤森にキスをしてしまった日から、後ろめたい気持ちでいっぱいだったのは確かだ。


だからこそ、もう藤森には会わないつもりでいた。


でもひなは別だ。


母親がパニクってる以上、冷静な判断をする人が側にいないと命の危険だってあるかもしれない。


必死に自分に言い訳をしながら、帰ったらさとみにきちんと謝ろうと思っていた。


あれは彼女の本心だろう。


だとしたら、今度はさとみの気持ちを尊重するべきだ。


これで最後にしよう。


俺は藤森の家へ急ぎながら、そう誓う。


車を飛ばして10分程で、藤森の家に着いた。


そういえば、彼女の家にあがったことはない。


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