Fragile~思い出に変わるまで〜
部屋がどこなのかわからなくて、携帯から電話をかけた。


プルルルル……カチャ


ワンコールで藤森が電話に出て、俺は早口で声をかけた。


「もしもし?」


「……もし…もし?

……健?」


声を詰まらせながら俺の名前を呼ぶ彼女は、きっと泣いてるんだろう。


「そう、俺

ひなの具合はどう?

部屋わかんないから、今家の前にいる」


ホッとしたような息遣いが聞こえる。


「206だよ

今は吐き気もおさまって寝てる」


「そっか、わかった

今、そっち行くから待ってろ」


そう言い残して電話を切り車から降りて足早に部屋へと向かう。


チャイムを押してひなを起こしちゃ可哀相だと思い、軽くノックをする。


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