Fragile~思い出に変わるまで〜
そんな俺を見てさとみはスッと席を立ち、俺の隣に座り肩を抱いてくれる。


「……健?

私は今でも健が大好きだし、出来ることならおじいちゃんおばあちゃんになるまで一緒にいたかったけど……

またひなちゃんのことで藤森さんから電話があったら……

健は無視できないでしょ?

……私は、毎回それに怯えながら暮らせるほど強くない

いい奥さんでいるのは……もう……疲れちゃったの……」


泣きながら俺の肩に顔を埋めるさとみに、何か言わなきゃと思うのに何も言葉が見つからない。


しばらくそうしていると、さとみが頭を起こして俺の顔を自分の方に向けた。


優しく俺の顔を確かめるように指で頬や唇をなぞったあと、そっと触れるように自分の唇を重ねてくる。


ゆっくりと唇を離して俺に抱き着くと、耳元で一番恐れていた言葉をさとみは俺に言った。

< 289 / 589 >

この作品をシェア

pagetop