Fragile~思い出に変わるまで〜
彼女はいつも自分のためじゃない。


俺のため……


あの時……


さとみが行かないでと言ったあの時。


たぶん初めてさとみは自分のために、自分の気持ちを俺に伝えてくれてたのかもしれない。


なのに俺はそんな警告には気づきもしないで、いつもの……俺のためのさとみになるように強要したんだ。


あれがラストチャンスだったとも知らずに……


こんな馬鹿なやつは死んだ方がいいのかもしれない。


ふとそんなことを思う。


このまま死んでしまえればどれだけ楽になれるだろう?


悲しみに溺れて、俺はそんな最低なことを考えていた。


そんなことをしたって何の解決にもならない。


それどころか、ますますさとみを苦しめることになるっていうのに……


ふとさとみの言葉が甦る。


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