Fragile~思い出に変わるまで〜
最後に、さとみが出て行くときに言った言葉……


『藤森さんとひなちゃんと三人で幸せになるんだよ

私は健が幸せなら、それだけで嬉しいから』


ふと玄関が開いたような気がした。


さとみ……


さとみが戻ってきてくれたんだろうか?


飲み過ぎてはっきりしない頭で考えるが、体が思うように動かない。


誰かが部屋に入ってくる気配がした。


俺が寝てると思って電気をつけないんだろうか?


そのままこちらに近づいてくる。


俺の側までやってくると、手が伸びてきてそっと俺の髪を撫でた。


「健……」


せつなそうにそう呼ぶ声に、俺は思わず叫んだ。


「さとみ!」


けれど声の主は答えてはくれない。


髪を撫でていた手が、ピクリと止まった。


幻なんだろうか?

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