Fragile~思い出に変わるまで〜
俺はそれを聞いて怒りに震えた。


今日、残業で遅くなることは、夕方あやにメールで知らせていたのだ。


しかも返信には自分は早く帰れそうだから、大丈夫だとあったはず。


そんな抑えきれない感情を、なんとかひなに気づかれないように気を付けながら、なるべく優しく聞いた。


「買い物かなんかに行ったのかな?
ママ、なんか言ってた?」


ひなは少しだけ戸惑ったように一瞬沈黙すると、おずおずと口を開く。


「うんとね……?
たけるがかえってくるまでにはかえってくるって……いってた」


俺が残業なのをいいことに、ひなを一人にして出かけたってことか……


あやの行動に心底呆れながら、一人きりで俺を待っていたひなが不憫でならなかった。


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