Fragile~思い出に変わるまで〜
いつものテンションとは違う桜井くんに戸惑いながら、私はわざと普段と変わらない態度で接する。


「あんなにたくさん美味しそうに食べてくれると、作ったかいがあったなぁ」


ありがとね?と、ニッコリ笑いながら言ったのに、桜井くんは少し思い詰めたような顔をして、黙りこんだ。


「……」


「……」


私も何も言えなくなって、しばらく沈黙が続く。


気まずい空気に押し潰されそうになりながら、フロントガラスから映る景色を眺めていると、ようやく彼が口を開いた。


「さとみさん……俺……」


重苦しい雰囲気で桜井くんが何かを伝えようとしていた。


私はそれが何なのか気付いていながら、ごまかすように明るく話す。


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