Fragile~思い出に変わるまで〜
私が落ち着くのを待って、桜井くんは今度は静かに話はじめた。



「さとみさん……

まだ課長のこと思ってるんですね?

……課長との大事な忘れ形見を一生懸命に育ててるさとみさんが、健太を通していつも課長を見てるって……気づいてました

でも……それでも俺が代わりになれればって思ったんですけど……

さとみさんはやっぱり強いや……

そんな寂しさだけを埋めるような選択はしなかったですもんね?


……そんなさとみさんだからこそ好きになったんですけど……」


言葉を詰まらせて、桜井くんは静かに泣いていた。


彼の言葉が胸に染みて、私も涙が止まらなくなる。


こんな私を好きになってくれてありがとう……


そして彼の気持ちに応えられなかったにもかかわらず、これまで通りでいてくれてありがとう……


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