Fragile~思い出に変わるまで〜
言葉には出さないけれど、私は桜井くんにそう感謝して、そっと彼の手を両手で包み込んだ。


そのまま握りしめると、驚いたように私を見る。


お互い涙でぐちゃぐちゃになった顔で、しばらく見つめ合うと、同じタイミングで吹き出した。


桜井くんはいつも私の気持ちを先読みしてくれる。


きっと、今の私の気持ちもわかってくれたんだと思った。


だからまた、こうして笑いあえる。


残酷かもしれないけど、彼の気持ちに少しだけ甘えさせてほしい。


彼への気持ちは恋愛感情じゃないかもしれないけど……


でも桜井くんはもうすでに家族のような存在だ。


この人を、大切な友人として、家族として、大事にしていこう。


私は桜井くんと笑い合いながら、心の中で固くそう誓った。


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