Fragile~思い出に変わるまで〜
まだ付き合い初めのころ、まさか結婚するとは思っていなかった俺は、淡い初恋話をさとみにしていた。


そんなことはすっかり忘れて、普通に話題にしてしまったけれど、さとみが名前を覚えていたということに驚いた。


さとみのことだから、クラス会の話が出たときから、気にしていたのかもしれない。


ふと笑みがこぼれた。


だから今日は質問が多かったのか……


まだ顔を真っ赤にして何か言ってる妻が、とても愛おしくて、欲情してしまう。


髪を撫でながら、頬に触れると、彼女はビクッと体を震わせた。


それが合図かのように、深いキスをする。


さとみを大切に思う気持ちは、嘘じゃない。


でもその傍らで、離婚して子供を育てながらがんばってる藤森の力になりたい気持ちも、確かに存在していた。
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