Fragile～思い出に変わるまで〜

「藤森さんて、元カノだった人だよね？

離婚、しちゃったんだ……」


震える声を一生懸命隠しながら、無理に作った笑顔でそう聞いてくる彼女が可愛くて、思わず意地悪したくなる。


「そうそう！よく覚えてんなぁ？

何？妬いちゃった？」


覗きこむようにしてそう言うと、彼女は真っ赤な顔をして顔をプイと横に向けた。


正直、結婚してこんなに経つのに彼女がいつまでも新婚の頃のように自分を思ってくれることが不思議でならない。


子供がいないせいもあるのか、自分が初めての男だからなのかわからないけれど……


でもいつも自分に愛情を注いでくれる妻を、俺は愛おしいと思ってた。


そうか、さとみは藤森が元カノだって知ってたんだっけ。


うっかりしてたな……


彼女を不安にさせてしまったかもしれない。