Fragile~思い出に変わるまで〜
さとみは俺からそっと視線を外すと、何か考えるように目を泳がせる。


それからもう一度俺の顔を見て、無理矢理作ったような笑顔で答えた。


「まあ、いろいろあったのよ

話せば長くなるし……

今日はせっかくのお花見と水族館なんだから、余計なことは忘れて一緒に楽しもう?」


そう曖昧な返事をするさとみに、あまり詳しいことは言いたくないのかもしれないと察して、それ以上は聞かないことにした。


その時――


さっきの男の子がこちらへ走り寄ってきながら、さとみを呼んだ。


「ママー!
このおじさん、ママも知ってる人?」


「マ…マ……?」


思わず口をついてその単語を繰り返してしまう。


さとみと男の子を交互に見比べながら、俺は明らかに動揺していた。


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