Fragile~思い出に変わるまで〜
呆然としながら、あのときのことを思い出す。


言ってくれてたら、藤森のところへなんか行かなかった。


さとみとお腹の子を全力で守ったはずだ。


なんで……


俺の思いを察したように、さとみは静かに首を振る。


「だから言わなかったの……

言ったら私の方に来てくれるのはわかってた

でも……それじゃ嫌だったの

藤森さんとひなちゃんに思いが残ったまま、私の元に来てもらっても嬉しくなかった

だから私だけを見て選んでほしかった

でも、健は彼女たちを選んだ

私はそのとき、もう覚悟を決めてたの

一人で生んで一人で立派に育ててみせるって……」


当時を思い出しているのか、一つ一つ丁寧に吐き出される言葉は、俺に重くのしかかる。


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