Fragile~思い出に変わるまで〜
そう礼を言うとパタパタと走っていった。


どうやらさとみにも自分の晴れ姿を見せたいらしい。


その後ろ姿を、俺はしげしげと見つめた。


もう小学生か……


初めて健太に会ったのも、桜の咲く季節だった。


ずいぶん大きくなったな……


これでもパパと呼んでもらえるまでには、かなりの時間を費やした。


それでも根気よく向き合えたのは、俺の子なんだという思い。


初めてパパと呼んでくれた時――


俺はやっと健太の父親になれたんだと実感したのを覚えている。


さとみと健太と暮らすようになって、俺はすごく幸せだった。


今まで感じたことのない満ち足りた穏やかな生活は、俺自身をも穏やかにしてくれた。


< 577 / 589 >

この作品をシェア

pagetop