Fragile~思い出に変わるまで〜
仕事で遅くなるなら、と藤森が指定した店は、地元と会社のちょうど中間くらいにある小洒落たイタリアンレストランだった。


地元にしろ会社の近くにしろ、二人でいるところを見られて変な噂でもたてられたら敵わない。


特に後ろめたいことがなくても、男女が二人でいれば、さっきの桜井みたいに勘繰るやつがいるかもしれないのだ。


それは出来るだけ避けたかった俺にとっても、都合がいい場所だった。


カランカランと音をたててドアを開けると、いい香りがしてくる。


グウゥゥ……


さすがに昼も食べないで仕事をしたせいで、お腹の虫が勢いよく鳴った。


話の前にまず腹ごしらえさせてもらおう。


そう思いながら、出てきた店員に、待ち合わせだと告げる。


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