Fragile~思い出に変わるまで〜
案内されたのは少し半個室のような席だった。


「健!」


すでに席についていた藤森が、小さく手を挙げて俺の名前を軽やかに呼ぶ。


「おー!悪かったな?
こんな時間になっちゃって
娘、大丈夫なのか?」


上着を脱いで椅子の背もたれにかけると、俺は彼女の対面に座った。


「うん、大丈夫

実家に今日はお泊りさせてきたから」


藤森はそう言いながら俺におしぼりを手渡してくれる。


「そっか、じゃあ安心だな?

あのさ、悪いんだけど話の前になんか腹に入れてもいい?

今日、昼からなんも食べてなくて腹ぺこなんだ」


倒れ込む真似をしながらそう言うと、藤森は申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせた。


「ごめんね?
こっちこそ急に呼び出しちゃって……

もしかしてこの時間作るために昼休み返上とかだった?」


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