Fragile~思い出に変わるまで〜
そうポツリとつぶやくと、藤森はへへっと、今度は照れたように笑った。

そんな藤森を見ていると、元旦那に腹がたってくる。


たぶん、比べているんだろう。


俺と……元旦那を……

さとみと……自分を……


そんな思いを藤森に気づかれないよう、俺はメニューを広げながら明るく話しかける。


「どれにする?
ピザもパスタもいいなぁ
俺、飲めないからガッツリ食っていいかな?」


覗き込むようにメニューを見ていると、藤森がプッと吹き出した。


「そうだったね?

飲めないってこないだも言ってたもんね?

一番飲める顔してるくせに」


クスクス笑いながら、からかうようにそう言った藤森の表情は、さっきの寂しそうな笑みではなく、本気で笑っているようだった。

< 72 / 589 >

この作品をシェア

pagetop