脱力系彼氏
 あたしの作った冷し中華は思ったよりもうまく出来て、2人でズルズルと音を立てながら一緒に食べた。
昇ちゃんに「美味しい?」って聞いてみても、返事はいつもと同じ。

おー、と一言。


それでも、残さずきちんと食べてくれて、単純なあたしは美味しかったのかな、なんて勘違いしてしまう。


早くも2回目の洗い物を済ませ、あたしはソファにいる昇ちゃんの横にぴたりとくっついて座った。もちろん、昇ちゃんは眉を顰める。

「暑ぃ」

それを無視して、頭を肩に乗せてやった。

一緒にいられる時くらい、甘えたい。
それが本音でしょう?

昇ちゃんはもうこれ以上何か言うのも面倒臭いらしく、黙ったまま不機嫌そうな顔をした。


暑くて暑くて仕方が無いのに、どうしても昇ちゃんにひっついていたくて、筋肉で少し硬いこの肩を、こんなにも心地良いと思ってしまう。

昇ちゃんからは、優しくて落ち着く、男の人の匂いがした。


香水をつけるのさえ面倒臭いのかな、なんて思っているうちに、あたしの意識は遠のいていく。


きっと今のあたし、幸せでニヤけてる。


昇ちゃんがそれを見て笑えばいいな、なんて思いながら……


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