脱力系彼氏
 久しぶりの冴子とのカラオケは、かなり盛り上がった。と言うよりも、冴子が盛り上げてくれた。
これもあたしへの元気づけなのかな。


冴子は声が低いのに、お世辞抜きで、歌手じゃないのかと尋ねてしまいそうなくらい抜群に歌が上手い。何回聞いても惚れ惚れしてしまう。

おまけに、あのノリは今のあたしには最高に助かる。あたしは、何もかも忘れてはしゃいだ。はしゃぐ事ができた。楽しくて楽しくて、カラオケを出るのがかなり名残惜しかったくらいで。

あたし達は11時半にカラオケを出て、くたくたになりながら、ようやくファミレスに辿り着いた。


「あつぅー! ちょっと盛り上がり過ぎたねー!」

運ばれて来たお冷やに顔を引っ付けていると、冴子は手で首元を仰ぎながらニヤリと笑った。

「あれくらい盛り上がらなきゃ、カラオケなんて行く意味ないじゃん」


冴子のこういう所、好きだなぁ。
さりげなく、いつもより気を配ってくれる所。

思わず、小さな笑いが零れた。

「ん、何?」

「ううん、何でもない」

「1人で笑うな、馬鹿」

冴子はそう言ったけれど、冴子だって、形のいい唇を歪ませて綺麗に笑った。
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