脱力系彼氏
 ああ、せっかくここまで走ってきたっていうのに、よりによって、こんな所で足を止めなきゃならないなんて。

赤信号。

昇ちゃんとの、数少ない想い出の場所。


ねぇ、あのキスは嘘だった? あたしに言われたから、仕方無かったの? 昇ちゃんは、ドキドキすらしていなかったの?


……違う。

初めてのキスだって、あたしが強引に奪った。あの時の、2回目のキスも、あたしからだ……。

昇ちゃんは、あたしとキスなんか、したくなかったんだ。

どうして、もっと早く気づかなかったのだろう。

あたし、完璧馬鹿だ。大馬鹿だ。


涙が止まらない。


信号が青くなり、あたしは早くこの場から走り去りたいのに、もう足がガクガクで、少しずつしか動かない。


ねぇ、さっき、どうして引き止めようとしてくれたの?

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