天を衝く槍
「まだ血ぃでるん?」


ヨースケがダラナの遺体を担いで、私と肩を組んでゆっくり歩いている時にふと言った。


私は彼に応急措置してもらった足首を見る。


包帯から血がにじみ出ていた。


……って、ヨースケってこの時の為に包帯常備してたのか…。


「止まりませんね」


「んー…まぁええか」


それを見てヨースケは歩きながら呟いた。


「担ぐで?」


「はい?」


「担ぐで?」


「へ?」


「担ぐで?」


「カツグデ?」


「やかましいわ」


私とのやり取りに苛っときたのか、彼は問答無用で私を担いだ。


「ヒィィイイイ」


聞こえなかったのではない。


意味が分からなかったのではない。


ヨースケが私を担ぐことで、彼の方が肉体的に疲労が更に溜まるかもしれないと考えていただけだ。


頭が弱くて意味が分からなかったわけではない。


「よ、ヨースケ、下ろしてくださいよ。体、大丈夫なんですか?」


「俺は男やで?ナメちゃアカンね~」


「いや、そういうんじゃなくて…」


「怪我人は黙って担がれてなさい」


――いやアンタも怪我人だろ


なんて思いながら、ゆらりゆらりと揺れる心地よさに私は目を閉じた。
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