ブラック王子に狙われて②


「えっとね。……教えて貰わなくてもいいとか言うんじゃなくて、慧くんの邪魔はしたくないから。だから、分からない所を教えて貰えれば……」

「………却下」

「え、何で?」

「分かってると思ってる所が間違ってたら?誤学習した状態で先に進むだろ」

「………それはそうかもだけど」

「それに、俺が絢に教えることで復習にもなるから、気にするな」

「でも……」


復習しなくても、慧くん平気じゃない。

私を気遣ってくれた言葉だって分かる。


「ってか、何か?俺と一緒に勉強したくないって遠回しに言ってんのか?」

「あ、いや、それは全然ちが「絢の全てを把握したいから、これ以上の議論は受け付けない」

「っ/////」


熱の籠った視線を浴びては反論する言葉が見つからない。


「行くぞ?」

「…んっ」


信号が青になり、彼に手を引かれて横断歩道を渡る。

コートの裾がはためいて、微かに風に乗ってシトラスの香りが届く。

少し前までは肩を並べて歩いていたのに

最近、彼は私の1歩前を歩く。

たぶん、彼が風よけになってくれているみたい。

11月に入り、だいぶ空気が冷たくなって来たから……。

< 116 / 288 >

この作品をシェア

pagetop