ブラック王子に狙われて②
別に、お泊りしてる間に何かしようとかは考えていない。
少し前にゆずの家に行った時に、
『長く付き合うコツ』という特集が書かれた雑誌を見て
そこに書かれていたのが、『生活環境の共有』という概念。
大人の交際であれば、『同棲』という枠組で
お互いの生活スキルを確認し合えるけど、
高校生の私達には、それは無理だから。
沖縄旅行を通して、
今まで知らなかった慧くんの素の部分を少し垣間見れて、
それを少しずつ増やせれば……と思ったのがきっかけ。
だって、あの澄ました顔のクール王子が、
あんなにも汗を掻くとは思いもしなくて……。
じとっと額や首に汗を掻くことはあっても
ポタポタ垂れるほど、汗を掻いたのを見たこと無かったから。
たぶん、私が知らない慧くんはまだたくさんある筈。
そういう慧くんを知ることで、
彼のことをもっともっと好きになれそうな気がして。
「絢、何飲む?」
「あったかいのなら、何でもいい」
「ケーキあるから、紅茶でいい?」
「うん、いいよ~」
キッチンで飲み物を用意して、
慧くんママお手製のシフォンケーキを手にして2階へと。