ブラック王子に狙われて②


1月中旬の土曜日。

放課後、絢の自宅で年度末試験に向けて勉強している。

大学へと進む同級生たちの殆どはセンター試験真っ只中。

俺と絢は既に留学先の大学の合格通知が届いていることもあって、

年度末試験に向けて勉強に専念出来るんだけど。

何故か、俺の隣りにいる彼女は上の空。

来月発売される『SëI』のニューシングルの先行予約が

今日の正午から開始されるらしくて。


正午3分前。

10分ほど前からスマホを握りしめてる。

何でも、初回限定特典のステッカー入りが欲しいらしい。

しかも、そのステッカー入りのが、

初回出荷数量が1万枚とかなり貴重らしくて。

1万もあったら買えそうな気がするけど、

先月のCDは初回出荷枚数が45万枚だったそうで。

今時、ダウンロードに移行しつつある音楽業界で

異例中の異例とも言える売り上げを叩き出しているらしく。


………気に喰わねぇ。

もしかしたら、めっちゃオッサンかもしれないし。

声は男性っぽいけど、かなりキーの高い曲も歌いこなすから

もしかしたら、女性かもしれないし……。


けど、絢はそんなこと全然気にしてない素振りで。

< 252 / 288 >

この作品をシェア

pagetop