キミの好きなところ。
~『おいで』
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「…そろそろ時間だね」
あなたは腕時計を見て、そう言った。
私は首を横に振る。
「やだ…帰りたくない」
「………」
目を伏せてしまった私の顔を、覗き込むあなた。
あなたの優しい表情に、涙が溢れてくる。
「…時間なんて、止まればいいのに」
そうしたら、ずっとあなたと一緒にいれるのに。
涙が頬を伝った。
「―――わかった」
あなたはそう言って腕時計をカシャンと外し、鞄の中に入れた。
「少しの間、時間を止めようか」
私の目の前に、差し出される手。
ドキドキしながら、その手に触れる。
本当に、時間が止まった気がした。
きゅっと手を握られたのと同時に、胸の奥がきゅんと締め付けられた。