キミの好きなところ。

 ~『おいで』

 

++++++++++


「…そろそろ時間だね」


あなたは腕時計を見て、そう言った。


私は首を横に振る。


「やだ…帰りたくない」


「………」


目を伏せてしまった私の顔を、覗き込むあなた。


あなたの優しい表情に、涙が溢れてくる。


「…時間なんて、止まればいいのに」


そうしたら、ずっとあなたと一緒にいれるのに。


涙が頬を伝った。


「―――わかった」


あなたはそう言って腕時計をカシャンと外し、鞄の中に入れた。


「少しの間、時間を止めようか」


私の目の前に、差し出される手。


ドキドキしながら、その手に触れる。


本当に、時間が止まった気がした。


きゅっと手を握られたのと同時に、胸の奥がきゅんと締め付けられた。


 
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