地図の中の小さな絆(3p)
赤い路。
 
それはあの地図だった。


「こうやって、ドライブしたところに線を引いてって、いつか日本を一周しような」


とっくの昔に忘れてしまっていた言葉。
あの人の声が聞こえたような気がした。

十年が過ぎて、その地図にはびっしりと赤い線が引かれ、真っ赤に変わっていた。


(一緒に線を引こうって言ったのに)

まだ線の引かれていない北海道を指でなぞった。

(どうして出て行ったのよ)

言ってはいけない言葉。

母が悲しむから?
それとも、母が苦しむから?

(どうして出て行ったのよ)

本当は責めたことなど一度もなかった。
 

車のドアをゆっくりと閉めながら、心臓の鼓動が速くなるのを感じていた。

処分するつもりだったその車を優しく撫でた。

線の引かれていない北海道を赤い線で埋めたいと単純にそう思った。


係の人にお礼を言うと
ヒールの高い靴を脱いで、その狭っ苦しい車に乗り込んだ。

 

               おわり
 
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