地図の中の小さな絆(3p)
遺品。
遺品の車は駐車場の隅にあるという。

えっ?

その車を見た途端に吹き出しそうになった。


それは小さなトラックで、荷台には屋根があり、煙突までついている。

そして、横には決して上手とはいえない字で

「石焼きいも」

と書いてあった。

これだけであの人がどんな生活をしていたのかが想像できた。


せまい運転席に腰掛けると忘れていたあの人の匂いを思い出した。

中は案外、小綺麗にしている。

ルームミラーにつけられたお守り、サンバイザーに挿まれた鉛筆、小さなカレンダーに付けられた赤い印。

淡々と目で追っていく。


ダッシュボードを開けると、小さく折りたたまれた地図が出てきた。

手垢にまみれたその地図を広げると、冷静に受け止めていたあの人の死が水紋のように体中に広がっていった。
 
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