Hurly-Burly3 【完】

多分、大和さんはあたしを落ち着かせる

天才なのかもしれない。

困った時はよくその手に慰められた。

「はい、もちろんお聞かせ下さい。

日和様とお話し出来ることを楽しみに

していたんですからね。」

あたしの周りにはこんなに素敵な人が

居たんだな。

それは当たり前なのかもしれない。

何と言ってもあたしと10以上も違うのだ。

大人の対応は当たり前なのかもしれない。

「ですが、今日は資料を取りに来て

日和様のお顔を一目見るために来た

わけですから後日また伺わせてもらいますよ。」

そうだよね、大和さん仕事で忙しいもんね。

母さんに任されて何でもこなしちゃうのだから、

大和さんを困らせてはいけない。

「日和様、私を侮っていませんか?

貴女に困らされたことなんて一度だって

ありませんよ。ただ、今日はお客様も居る

ようですし、後日ゆっくりお話しされた方が

いいと思っているだけですよ。」

大和さんはいつだって優しい人だ。

あたしの考えていることがどうもすぐ

分かってしまうらしい。

「はい、楽しみにしています。」

にっこりとほほ笑むと大和さんは

目元を細めてクスリと笑った。

2階の書斎に資料を取りに来た大和さんは

それからすぐに帰って行った。

ゆっくりとあたしの頭を撫でると、

「今回はゆっくり出来そうなので

いつでも呼んでください。」

優しい声色を残して去って行く大和さんは

やっぱり途方もないぐらいの大人であたしが

どんなに頑張ってもそんなに落ち着いた感じ

にはきっとなりえないんだろうなって思った。

どうして、兄ちゃんはあんなふうにならなかったんだ?

兄ちゃんの精神年齢は幼稚園レベルなのに比べて

大和さんはきっと年齢相応なのかもしれないと

思うとため息を出していた。

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