結婚白書Ⅰ 【違反切符】



毎晩怒りながら上っていた階段を 今夜は”トントントン”と軽快に上る。

携帯を見ると 和音さんからのメールが2件着信されていた。



『さっきは急に泣いたりしてごめんなさいね 

でも 高志さんの気持ちもわかったし 安心しました

母たちに報告したら(今夜もおばが待ってたの!)狂喜乱舞って感じで 

さっそくそちらにお電話してました では 明日待ってます 和音』



『いつもなら すぐに返信が来るのにどうしたの?何かありましたか?

まさか事故とかじゃないですよね 心配してます 和音』



”高志さん” だって 初めて呼ばれたな はは・・・照れくさいぞ。

自分のにやけた顔がガラス窓に映ってるのが見えて 慌ててカーテンを閉めた。

心配してるよな メールより電話の方がいいか。



「もしもし メールありがとう いま 帰って来たんだ」


「あっ うん ちょっと待ってね」



そばに誰かがいたのか 移動する気配を感じた。



「ごめんなさいね リビングにいたの いま自分の部屋に来たから大丈夫

メールの返事が来ないから心配になっちゃって メールしたんだけど・・・」


「そうだと思った  ごめん メールに今気が付いたんだ ちょっとね」



スピード違反で覆面パトに捕まった事を話した。


気分良く飛ばしてたら いつの間にか後ろにいた車の上に赤いランプ

程なくサイレンの音と ”そこの車 左に寄って止まりなさい”のマイクの声

止められて 質問されて 免許証の提示を求められて

青い切符を渡された・・・



「まいったよ もう少しで赤の切符だったからね 

それだと当分運転できないし 簡易裁判所行きだもんなぁ」


「青い切符だとどうなるの?」


「罰金を振り込んで終わり あっ 点数も加算されるか」


「そうなんだ 大変だったのね でも気をつけてね」


「うん 気をつけるよ でもさ 心配してもらうのって なんか嬉しいな」


「もう 変なコト言わないで こっちは真剣に心配したんだから」



彼女のちょっと怒った声が聞こえる。

いつもなら 違反切符を渡されたらへこむけど 

こんな会話で気持ちが楽になるんだ・・・




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