結婚白書Ⅰ 【違反切符】


「明日11時ごろ行くよ いいかな?」


「うん わかった」


「メールにさ 初めて俺の名前を書いてくれてたね これから名前で呼んでよ 

俺なんて最初っから”和音さん”って呼んでるんだけどな」


「えっ・・・・う~ん 高ちゃんじゃダメ?」


「それだけはやめてくれー お袋に呼ばれてるみたいだよ」



カラカラと弾けるような声が聞こえ 笑い転げる彼女が見えるようだった。

彼女となら これからも楽しく過ごせそうだ。





翌朝 8時頃 お袋にたたき起こされた。

まだ寝かせてくれと抵抗したが・・・



「ほら起きて 起きて 髭もそって その頭を何とかしなさい 

ご挨拶に行くんですからね シャキッとした顔で行かなきゃ 

シャツもノリを効かせて バリッと仕上げておいたわよ」


「えっ 背広で行くの? 普段着で良いよ」


「なに言ってんの それじゃ恥をかくのはアンタなの!

ただでさえ あちら様には申し訳ないことしてるのに 

これ以上 醜態をさらさないで頂戴」



言いたい放題のお袋を横目に見ながら洗面所に向かった。



背広かよ あー気が重いなぁ・・・


出掛けに 全身をくまなくチェックされ 立派な菓子折りを持たされた。



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